2008年5月24日/2010年4月24日


鹿は春日大社の神使:春日大社創建の際、茨城県にある鹿島神宮の祭神・武甕槌命(タケミカヅチ)が神鹿に乗ってやってきたという言い伝えから、神の使いとして大切に保護されてきた。

誰もいない飛火野を散歩していたら、鹿が正面から近づいてきた。もしかして人間の言葉で話しかけてくるのかな。60年に1度行われる「鎮めの儀式」で用いる目を運ぶ役(「運び番」)に選ばれたらどうしよう。『鹿男あをによし』の影響か、いらぬことを考えていたら、「キーン」と鳴いて遠ざかっていった。安心したけど、ちょっとがっかり。。。

卑弥呼(ヒミコ)に仕えていたという奈良の鹿、京都の狐、大阪の鼠は卑弥呼の死後、1800年に渡ってこの目の力を使って、地中にいる大鯰が暴れるのを封印してきた。この目がないと日本は大変なことになるという。

目は人間界で「サンカク」と呼ばれる。鹿にその「サンカク」をもってくるようにと言われたらやっぱり三角形のものを探すだろう。ところが、たどりついたものは丸い鏡だった。これ、どこが三角?鹿のやつ、いい加減なことを言ったな。。。いや、天理市にある黒塚古墳展示館で実物そっくりのものを手にしてよくわかった。円形の鏡の縁の断面図が三角であることを。

 

●奈良の鹿  


↓鹿は春日大社の神使というだけあって、至るところに鹿がいる。二の鳥居を過ぎたところに鹿の手水場があり、石灯篭の火袋にも神鹿の絵が彫られている。釣灯篭にもモミジと鹿のデザインが施されているものがある。

飛火野の小鹿 奈良公園の八重桜と鹿

苔むした石灯篭の火袋に神鹿の彫刻が石灯篭に立つ本物の鹿釣灯篭にも鹿が
鹿の手水場興福寺五重塔と鹿奈良公園の鹿
マンホールにも鹿が紙を食べる鹿(若草山の鹿と烏)真っ白なお尻から...

 

●春日神社  
南門釣灯篭木が直会殿の屋根を突き破っている
●大仏殿  
南大門大仏殿がいかに大きいかがよくわかる 大仏殿の窓(大仏様の手のひらが約1.5m)

 

▲黒塚古墳  

『鹿男あをによし』の「サンカク」を求めて黒塚古墳へ。
JR桜井線の柳本駅から歩いて5分もすると黒塚古墳、そしてその向こうに『鹿男…』でも放送された黒塚古墳展示館がある。

天理市JR桜井線柳本駅へ 柳本駅から徒歩5分で→

→黒塚古墳(全体模型)天理市黒塚古墳展示館館内


    ▲これ以降は黒塚古墳館の資料の文を引用しています。


「黒塚古墳を含む古墳群は、3世紀後半ごろから4世紀にかけて(古墳時代前期)、相次いで巨大な前方後円墳が築造された。これらの前方後円墳には、倭国の支配者たちが葬られたと考えられている。」


「古代の日本で出土する鏡は、銅を主成分として、このほかに錫、鉛を混合した合金でできている。鏡が鋳造された当初は黄金色に輝いていた。
銅鏡には古墳時代に限ると、鏡の周縁により、平縁と三角縁に分類される。」
   
「黒塚古墳から出土した鏡は34面。画文帯神獣鏡1面と三角縁神獣鏡33面である。大きさを比較すると一目瞭然。右の画文帯神獣鏡は直径13.5cmであるのに、左の三角縁盤龍鏡(17号)は直径24.7cmである。」
17号鏡:三角縁複波紋帯盤龍鏡(24.7cm) 画文帯神獣鏡(径13.5cm)


▲さまざまな三角縁神獣鏡  クリックすると大きな画像が見られます 
8号鏡:三角縁神人龍虎画像鏡(径22.3cm)15号鏡:三角縁獣帯四神四獣鏡(径22.2cm)24号鏡:三角縁唐草文帯四神四獣鏡
(径23.7cm)
「三角形の断面を有する鏡は中国では出土例がない。文様面(鏡の裏側にあたる)の分類により、方格規矩文鏡・内行花文鏡・画文帯神獣鏡・獣帯鏡・神獣鏡など、多くの種類が確認されている。」
17号鏡:三角縁複波紋帯盤龍鏡(24.7cm) 25号鏡:三角縁銘帯四神四獣鏡(径22.0cm) 


三角縁神獣鏡について  


「三角縁神獣鏡はこれまで近畿地方を中心にして400面以上が確認されている。いわば古墳時代において最も流行した鏡といえる。古墳への副葬は1面から多くても5面程度であり、10面以上副葬された古墳は岡山県備前車塚古墳、奈良県佐味田宝塚古墳、桜井茶臼山古墳ぐらいである。」


「このような出土状況から、京都府山城町に所在する椿井大塚山古墳の32面以上と、黒塚古墳から出土した33面という数字はいかにも突出している。三角縁神獣鏡が副葬された古墳をみると、やはりその地域を代表するような大形の前方後円墳が多く目につく。」

 石室の実物大復元模型 
「三角縁神獣鏡の主要なモチーフは、神仙と霊獣の織り成す世界観を直径20cm余りの空間に表現していることである。奈良県新山古墳の鏡には、「西王母」「東王父」という文字が神像の傍らに鋳出され、これから、崑崙山に住む不老長生の神々であることが判る。獣も虎や龍などの神仙世界に住む霊獣であり、こうした鏡の持つ霊力が、現実の王権により強く意識されていたのであろう。
倭王権は、地域支配の一環としてこのような霊力の宿る三角縁神獣鏡を列島各地に配布した説が有力である。」



鏡に刻まれた文章
「神仙や霊獣の周囲には文章(銘文)が記されている。簡単なものは吉祥句である「天王・日月」であったりする。文章を記したものでは、製作者と鏡をほめたたえる語句、神仙郷の神々や、あるいは、鏡を持つことによって得られる、長寿や子孫繁栄などが内容として盛られている。 また、中には年号を記した紀年鏡もある。」


   
鏡に鋳出された動物
「鏡の主文様に配置された霊獣(虎、龍など)のほかに、我々に馴染み深い動物たちを目にすることができる。文様が鮮明な15号鏡では、玄武や孔雀、鳥(翼を大きく広げている)・魚・蟹なども見られる。」

←「17号鏡では、主文様の獣の間に小さい表現で、魚を銜えた水鳥や、首を交差させた2羽の鳥・亀・蛙・魚などもあり、さながら水中の世界を表現したかのようである。
7号鏡では像やらくだなど、中国から見ても異国の動物達が表現されている。」
 17号鏡:三角縁複波紋帯盤龍鏡 
神のポーズ、獣のポーズ
←「鏡に鋳出された神像は、顔を正面に向けた座像で両手を襟の前で合わせている。服の袂は大きく膨らんで威厳をあらわしている。頭には三連の山形をした冠や、両端から内側に蕨のように巻き込んだ冠が見られる。
三山形は東王父を現し、蕨方は西王母をあらわしている。
衣服の肩付近から伸びるのは、神仙世界の象徴ともいえる雲気が表現されている。」
21号鏡:三角縁銘帯四神四獣鏡 顔が正面で胴体は横を向いている

→「銅は徐州から出て、工人は洛陽から出るとある。
徐州は現在の山東省南部から江蘇省あたりとされ、洛陽は魏国の都であった。このため三角縁神獣鏡の政策地を魏国と考える有力な根拠とされた。鏡に記された文章は、都出身の優秀な工人により作られた立派な鏡であり。子孫がこの鏡を持つことで繁栄することを宣伝しているのであろう。」
↑「獣は顔が正面で胴体は横を向く。主文様の獣は虎と龍が表現されるが、胴体に刻まれた体毛と鱗の文様により区別される。」
 3号鏡の三角縁銘帯四神四獣鏡 


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