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宇宙の果てに吸い込まれていく登山者たち
 
白馬岳猿倉→白馬尻→葱平→お花畑→白馬山荘→白馬山頂→三国境→小蓮華山→白馬大池→乗鞍岳→天狗原→栂池自然公園駅
年月日 2003年8月10日〜11日
地域北アルプス
2932m
天気晴れ/雨
ひとこと日本三大雪渓、お花畑
温泉倉下の湯
 

 

  ▲今年こそは白馬岳に!▼
  


猿倉

  登山靴を忘れたために白馬岳登山を断念したのは忘れもしない、ちょうど1年前。今年は登山靴を忘れなかった。本当は金曜日の夜出発して土曜日から登山する予定だったが、台風10号のため、1日遅れで土曜日の夜8時に出発。日曜日に登って月曜日に下山することにした。月曜日を休暇にしておいてよかった。
土曜日の夜中に八方駐車場に着き、車中泊。翌朝6時前に起きて他の人達とタクシーに相乗りして猿倉まで行く。下界はどんよりしたお天気だがタクシーの運転手が「空が抜けていて今日登る人はラッキーだ」と言ってくれた。さあ、猿倉から白馬岳めざして登山開始(6:30)!
白馬尻までは普通の山道をなんとなく1時間あまり歩く(7:40)。
白馬尻で少し休憩した後、少し歩くとあの大雪渓が見えてくる。

 

▲大雪渓▼  
  

ここでアイゼンをつけて大雪渓へ(7:55)。幅の広い大雪渓だが、最も危険でないところにベンガラという赤い顔料の印しがついており、そこを一列になって歩く。人気のあるこのコースは人も多く、遠くから見ると、まるで途切れることのない蟻の行列のようだ。上を見上げると遠くはるかかなたにこれから登ろうとしている山々がそびえ立っている。本当にあんな遠いところまで行き着くのだろうかと思いながらひたすら歩く。雪のひんやりとした冷気が、歩き続けて暑くなった体をちょうどいい具合に冷やしてくれて心地よい。

中間地点に差し掛かったころ、係員の人が落石があるので立ち止まらずに進むようにと皆に呼びかけている。そこにはすでに落石に当たって足をけがした人が応急手当をしてもらって横たわっていた。大雪渓のスケールの大きさ、その向こうに堂々とそびえる山々、その果てにはこれまで見たこともない深い群青色の空、そしてその先に吸い込まれるように歩いていく登山者達の列など、ここには感動的なものが多すぎるのも確かだが、とっても危険な場所でもあるので、さくさくと写真を撮って通り過ぎる。
やがて、ヘリコプターが近くまで飛んで来て、あのけが人を運んでいった。
2時間後に葱平(ねぶかっぴら)にたどり着き、ようやく雪渓が終わった(9:55)。登ってきた雪渓を見下ろしながら一休み。 

 


白馬岳をめざして大雪渓を歩く


お花畑

 

 

▲白馬山荘▼
  


白馬山荘までもう少し


杓子岳と鑓ヶ岳

  さあ、これからは雪がない分、坂がきつい。いつもどおりゆっくりゆっくり歩いて行ったが、無意識のうちに緊張していた雪の上の2時間が堪えたのか、急登は初めからつらいものがあった。休憩が多くなった。お花畑のあたり(写真上)では、道の上を小川のようにちょろちょろ気持ちよさそうに流れる水と、周囲に咲く花たちに背中を押してもらいながらなんとか村営白馬岳頂上宿舎に着いた。この2時間あまりの歩きが一番つらかった。ここまで来ると、今日の目的地である白馬山荘までもう少し。

ようやくあこがれの白馬山荘に到着(14:50)!長くてつらかっただけに達成感はひとしお。ここの山荘は1500人収容可能なホテル並みの山小屋。食堂とは別にレストランの建物があり、そこでは枝豆をおつまみにビールをジョッキで飲めるし、ケーキを食べながらお茶することだってできる。標高が高いので空気は冷たいが、夏の太陽はシャープ。しばらく外のベンチに座り、杓子岳と鑓ヶ岳を見下ろしながらゆっくりする。ここからは15分で着く白馬岳頂上からの景色は明日のお楽しみにして、今日の残り時間はひたすら休む...。これが大きな間違いだった。

翌朝起きると(6:30)濃い霧がかかっている。すぐに晴れると思っていたら、雨が落ちてきた。結局、頂上から見渡せるはずのすばらしい展望や、なだらかな山肌一面に見えるはずのお花畑は鉛色のベールにすっぽり包まれてしまった。残念のひとこと。雨の中ひたすら歩くだけ。白馬大池まで下りる(10:00)と、大岩の上を歩き、小雪渓を渡ってまた大岩、そして樹林帯を下る、下る、下る。やっと着いた天狗原はぬかるみだらけ。去年見た景色が視界に入ってくると、栂池高原自然駅はすぐそこ。雨はあがっていた。