牛馬童子の像(ここから写真撮影禁止の熊野本宮大社)
 
中辺路
(なかへち)
約5時間
滝尻王子→不寝王子→高原熊野神社→大門王子→十丈王子→大坂本王子→近露王子
年月日2009年3月15日
地域熊野古道の中辺路の一部(和歌山県)
最高地点700m
天気晴れ
ひとこといにしえの信仰の道を歩く
 

 

歩いたコース ▲滝尻王子〜高原霧の里休憩所▼
  


滝尻王子(鳥居)


乳岩(胎内くぐり)


不寝王子(スタンプを押す)


飯盛山展望台からの展望


高原熊野神社(高原霧の里休憩所)

※「〜王子(王子社)」とは
熊野九十九王子は京都から熊野三山に至るまでの途次、難行苦行の信仰の道をつなぐために設けられた神社。熊野権現の御子神を祀る分社であり、水垢離、塩垢離などの禊ぎにより身を清め、心新たに熊野の地を遥拝し、また和歌会や里神楽などの法楽を行い旅の安全を祈願する場でした。(熊野古道館の資料より)
 

熊野古道は、熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)をめざして、京都や大阪、伊勢、吉野から、平安貴族や庶民など参詣の人々が歩いた道で、小辺路、中辺路、大辺路、伊勢路、大峯奥崖道といくつもの道筋がある。これらすべての道が、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産にも登録されている。スペインのサンチャゴ巡礼道に続く、世界で2番目の「道」の世界遺産だそうだ。

その中でも中世から今日まで、もっとも多くの旅人を引き寄せているという中辺路(なかへち)を今回は選んだ。歩き通すと一泊二日かかる(40km)ので、時間の都合上、最初の14km(滝尻〜近露)を歩くことに。

近露からは車で本宮に向かう予定なので、滝尻から近露まで歩いている間に車を到着地点まで運んでくれる乗用車搬送サービスをお願いすることにした(5000円)。その待ち合わせが滝尻に8時。少し遅れたが、この時間ほかに誰もいなかったので、すぐに向こうから見つけてくれ、スムーズに預けることができた。

橋を渡ったところにある熊野古道館(写真下)は9時開館のはずだったが、すでに開いていたので中に入り、熊野古道中辺路押印帳をゲット(100円)。随所にスタンプを押すところがあり、完歩すると完全踏破証明書もいただけるということだ。

いろいろ準備してスタートするころには9時を回っていた(9時5分)。滝尻王子(写真左一番上)の裏手から、左手に川のせせらぎを聞きながら古道に入る。ガイドブックには「最初の坂がとりわけ急だ」とあったが、確かに石段が続いている。いつになったら急になるのかなと思いながら上っていると、約15分後に胎内くぐり、その5分後に乳岩(写真左2番目)に到着。そのまた5分後に不寝王子(写真左3番目)に到着(9:30)。さっそくスタンプを押す。

その後、針葉樹と広葉常緑樹が混ざった林の中を進み、木の根っこが地上をにょきにょき這っているアートの道(写真下)(この後もよく見かけることになる)を何度か歩くと剣ノ山経塚にくる。しばらくすると、頭上が開けて青空が見えるようになった。今日はこんなに天気がよかったんだと改めて思い心もうきうき。

そのうち分岐点で左側の階段を上るとそこは飯盛山山頂の展望台(写真左4番目)。この後林の中に入るが一度抜けて青空の下を歩くとまた林の中に入り、今度は石畳の坂を下りていくと林道に出た(写真下)。林道を渡ってまた林の中に入っていくと針地蔵尊がある。このあたりで初めて後ろから歩いて来る人を一人発見。日曜日なのに世界遺産の道を歩く人がこんなに少ないとは。。

ガスのにおいがすると思ったらこのあたりにはヒサカキの木が多くたくさんの花をつけているからだ。あっ、今年初めてのスミレ(写真下)を見いつけた!小さな木々も芽吹き始めている。あちこちに小さな春を見つけて道草しているうちに、人が数人追い越して行った。でも人が増えてきてちょっと安心。

その後、急な木の階段が続く。滝尻の最初の急登よりこっちの方がきついのではと思ったが、いつもどおりゆっくりゆっくり上るので大丈夫。しばらくしてNHKのテレビ塔(写真下)までやってきた。林から出ると民家が見えてきた。ここからは青空の下、左側に山々の景色を見ながら、民家が並んだ道を歩く。モクレンは蕾がはちきれんばかりに膨らんでいるし、フキノトウやヤマネコノメソウ(写真下)など早春の花たちが道を飾っている。

高原熊野神社(写真左一番下)までやってきた。神社の前で本格的な巡礼の格好をした人たちに語り部さんが説明をしていた。このすぐ先が、高原霧の里休憩所(写真左一番下マウスオーバー)(11:15))。展望がよく、広い駐車場もある。地元のおばあちゃんたちがやっているお店があり、ちょっとしたおみやげや手作りのお餅などを売っている。「ここのコーヒーはインスタントで、美味しいコーヒーはすぐ近くのカフェで飲めます」と言っていた。ここで、棚田と果無山脈が織り成す美しい景色(写真下パノラマ)を見渡しながら少し休憩。

   
   
熊野古道館(みずもと商店)立派なトイレ(もう一軒お店がある)世界遺産(川沿いからスタート)
坂には石段(ツブラジイの大木)根っこのアートが多い(小さい春)石畳の道(青空の下)
石畳から林道へ(面白い形をした指標)スミレ(ヒサカキ)急な木の階段(テレビ塔)
フキノトウ(ヤマネコノメソウ)モクレン(ネコヤナギの花)ユニークな手作り家(シイタケ栽培)
 

高原霧の里休憩所からの展望(昔は多かった棚田がここにはまだ残存)

 

▲高原霧の里休憩所〜十丈王子▼  
  

休憩後、民家の間の狭い石畳の坂を上っていく(11:40)。日向の斜面には山で見たのとは違う種類のスミレが咲いていた。民家の窓越しにはニャンコが日向ぼっこ。そのうち民家とはおさらばして、丘の上に出た。道標は「8 熊野古道」となっている(写真下)。滝尻から500mごとに番号が増えていっているので、ここでやっと4km歩いたことになる。目的地の近露は26番なので、まだまだ。道草ばかり食っていたら今日中に着かないかもしれない。。。少し速歩きになった。

山の中に入り、比較的平坦な道をどんどん歩いていくと、左側に何やらユニークな家(民家ではないようだ)が建っており、その前でお昼を食べているハイカーがいた。少し上ったら高原池(写真右上マウスオーバー)だ。その後階段を上っていくと、大門王子(写真右上)。

さくさく歩いていくと、左手に展望が開けた。遠くに集落と山並みが見える(写真下)。10分ぐらいで十丈王子跡(写真右下)(12:45)。広場になっていてベンチもあり(写真下)、この気持ちいい陽だまりでお昼を食べることにする。すでに一人でお昼を食べている人がいたが、その人はバイオトイレの設置(写真下)に来ている人だった。めったに人に会わないこの地で一人残されると人恋しいようでいろいろ話しかけてきてくれる。もとは鎌倉の方だがバイオトイレの設置で全国飛び回っているとのこと。北アルプスなどの設置が多いとか。ヘリコプターでばらして運び現地でまた組み立てるのだそうだ。ご苦労様です!

さらにその方によると、昔このあたりには茶屋4、5件あったそうだ。この下は昔棚田がずっと下まで続いていたそうだが今は杉の木が植えられている。「それにしても昨日までひどい天気だったのに、今日はこんないいお天気になって、ラッキーですね」と言われた。なんと、ここより少し北の山で雪が降っていたのだそうだ。確かに昨日のパンダからずっといい天気でよかった。

 
大門王子(高原池)


十丈王子(休憩広場)

 

  
棚田(民家の間の石畳の坂)まだ8/26の地点(民家のにゃんこ)ユニークな家(山道)
山並みの展望十丈王子のバイオトイレの設置

 

 

▲十丈王子〜近露王子▼
  

牛馬童子の像(宝篋印塔)

近露王子(石畳の坂)

熊野本宮大社(大斎原の日本最大の鳥居)

熊野速玉大社(弁慶像)

那智の滝(熊野那智大社)
 

ずっと話の相手をしてあげていたいが、それでは目的地にいつまでたっても着かないので、この辺でお別れして歩きを再開(13:10)。開けた十丈王子の広場から山の中に入っていくと小判地蔵(写真下)。「飢えと疲労のために、小判をくわえたまま、ここで倒れたという巡礼を弔って、まつられたもの」だそうだ。

続いて悪四郎屋敷跡。「十丈の悪四郎は伝説上の有名な人物で、力が強く、頓知にたけていたといわれる。悪四郎の「悪」は悪者のことではなく、勇猛で強いというような意味」だそうだ。

緩やかな下り坂が続くので速足でさくさく歩いていくと、500mごとに立つ道標が14、15、16、17番とどんどん過ぎていく。その後少し上って熊野詣での盛んな頃は茶店もあったといわれる上多和茶屋跡までやってくると、十丈王子の押印場所で会った年配の方に追いついてしまい、「速いなあ。背中に羽でもついとんか」と言われた。さすが大阪人!

この方はところどころで車を使いながらだが、大阪から歩いてきているそうで今日で10日目になるそうだ。疲れのピークはとっくに超えて気力で歩いているにちがいない。今日は継桜王子まで歩いて一泊し、明日は本宮まで歩くという。なるほで今朝歩き始めた我々とはわけが違うはずだ。

あっという間に1km歩いて「旧暦11月23日の番にこの山から東方の空を拝むと、月が三つ表れる」という三体月伝説の場所にやってきた。そのあと一旦林道に出て、また山の中に入っていく。どんどん下っていくと沢が現れ、すぐ近くに大坂本王子(写真下)。

この辺からは右側に沢の音を聞きながら下っていく。沢が小川になりだんだん大きくなってくると、向こうに国道が見えて観光バスが停まっているのが見える。左に回り込めばそのまま牛馬童子の像に行くが、国道を渡って道の駅「牛馬童子ふれあいパーキング」で一休み(写真下)(14:30〜14:50)。

牛馬童子の像はバス停からすぐだと思っていたら、意外と距離があった。せっかくバスでやってきた人も大変にちがいない。この間の道はやはり観光客がかなり多い。約10分後に会った牛馬童子(写真一番上と左一番上)(15:05)は思ったよりはるかに小さかった。中辺路を通って那智で3年のあいだ修業されたという花山法王の姿を刻んだものだそうだが、名前の通り牛と馬の両方に乗っているところがおもしろい。でもこれは明治末ころに作られたもので、むしろ、この後ろにある宝篋印塔(写真左一番上マウスオーバー)の方が歴史的価値は高いそうだ。

ここまできたらゴールの近露はすぐそこ。近露は古道の宿場として栄えた町らしい。石畳の坂を下りて林道に出ると、満開になった一本のサクラ(おそらく早咲き)(写真下)が我々を出迎えてくれた。日置川の橋を渡り今回のゴールである近露王子(写真左2番目)(15:20)へ。

旅館「月の家」で搬送してもらった車の鍵を返してもらい、駐車場に行くと、道中追い抜かれたり追い越したりしていたハイカー3人組に会った。バスの便が少ないのでやはり搬送サービスを使用していたようだ。

その後、車で熊野本宮大社(写真左3番目)に行きお参りし、川湯温泉の「ペンションあしたの森」(写真下)に宿泊。熊野牛のステーキがおいしかった。翌日熊野速玉大社(写真左4番目)と、熊野那智大社(写真左5番目)にお参りして、海岸線をドライブして白浜まで戻り、くえ料理を食べて関空に戻った。

   
小判地蔵(木々)一里塚跡(道)上多和茶屋跡

大阪本王子(沢)

もうすぐ道の駅(道の真ん中に・・・)道の駅(牛馬童子口バス停)
サクラ(ユキヤナギ)近露を流れる日置川(月の家旅館)ペンションあしたの森(熊野牛のステーキ)
ペンションの前の川が温泉本宮のサクラ(熊野川)那智の滝とサクラ(もうで餅)
  
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